子どもの可能性を最大限に引き出す a.schoolが創る新しい学習塾

 今の学校で学べることだけでは不十分だ! a.schoolは問題を覚えて解くだけの知識主導型学習に偏重するのではなく、自分の興味関心に基づき探究・創造・協働のサイクルをまわす探究学習を追求する。教育業界にイノベーションを起こすべく挑戦を続けているベンチャーだ。

 a.schoolでは子どもも大人もあだ名で呼び合うそうだ。成績や受験よりも大切なものを見出しており、一人ひとりの個性を大切にするカルチャーがあるからだろう。取材中も笑いが絶えない、そんな岩田CEOにa.school起業までの経緯や現在の事業、今後の展開について話を伺った。

a.school「動機づけ教育を行う教育系ベンチャー」

基本概要 代表 岩田拓真 設立 2013年9月5日
サービス (どういうことやってる会社)
小学生を対象にした探究学習塾
– 学習塾の経営- 探究学習教材を土台とするフランチャイズ経営
– 探究学習/創造性教育プログラムの企画開発
– ワークショップ・イベントの企画・運営
– 教育関連のコンサルティング・調査研究

ビジョン (何を目指しているのか) 
「探究びと」になろう
 勉強でも、仕事でも、遊びでもいい。一人ひとりが、興味関心に基づき、新しいことに挑戦し、いつの間にか没頭し、自分の可能性を最大限に発揮して生きる。そんな人たちに溢れる世界をつくる。

ワンポイント(サービス、ビジョンかいつまみ)
 小中高校生向けの探究学習塾を運営し、仕事や暮らしにつながる実践的な学びを通塾コースやサマースクールなどの特別プログラムを通して提供する教育系ベンチャー。成績アップや受験勉強の指導ではなく、誰もが内に秘めている知的探究心を呼び起こし、夢中になれる環境をつくりだすことで、子どもたちの学びを支えている。

「動機づけ教育」主導の学習塾をこれからのメインストリームに

——なぜ起業されたのですか。そして、なぜ本郷を拠点に活動するようになったのですか?

東大大学院の出身なんです。その時、i.school[1] に0期生として参加しました。そこで見つけた学生および社会人のメンバーと一緒に、モチベーションメーカーというNPO法人を立ち上げました。コンサルティングファームで3年半働きながらの挑戦でしたね。

当時から「動機づけ教育」に注目していました。教育格差が生じる原因として、モチベーション格差があるからではないかという仮説を持っていたからです。そこで、「学ぶって面白い」という好奇心を育てるプログラムを子どもたちに提供した方が良いのではと考えました。特に経済的に課題のある家庭を対象にして、動機づけ教育ワークショップを行っていました。東大の先生方が応援してくださって、i.schoolスタジオや本郷、駒場の教室を借りてやっていたかな。本郷を拠点においたのは自然な流れですね。

[1] i.schoolは2009年に東京大学で始まったイノベーション教育プログラムです。このプログラムでは社会的課題を解決するアイデア創出法に焦点を当て、人間中心イノベーションを体系的に学んでいきます。主に大学院生を対象とした通年のプログラムで修了生は100名以上にのぼります。2017年度にi.schoolは東京大学から独立し、より開かれた教育活動を目指しています。

https://ischool.or.jp/

3年半やってみて、動機づけ教育は一部の子どもたちだけではなく、日本全国の子どもたちに必要だと気が付きました。これからはもっと子どもたちの考える力が必要とされてくるし、ニーズがあるなと思ったので、起業しました。

本郷を拠点に置くもう一つの理由は、中心地で勝負しないといけないという想いがあったからです。少し離れた場所で塾をやっても、「ああいう場所だからできるんでしょ」と扱われてしまうんですね。珍しい変わった塾という見せ方はしたくなくて、これからのメインストリームの塾になるんだということを意識していました。

——偏差値偏重の教育を推進する学習塾が多く存在する中で、本郷に来て良かったことはありますか?

拠点を決めるにあたって迷ったところもあります。今の受験スタイルの象徴的な学習塾がたくさんある土地でもありますから。でもあえてその土地で勝負することで、新しい領域を作っていきたいと考えました。

本郷にはキャンパスもあるし、研究者もいます。研究者をスクールに呼ぶことで、子どもがプロフェッナルに触れ合うこともできます。町の中で教室を展開することに可能性があるなと思ったんですね。

上野公園なども含め、文化施設が東大を中心に多く存在しています。フィールドワークに行くことで学びがあるなと思いますね。

意外とインターンに東大生が多いというわけではなくて、慶応や早稲田、MARCHなど様々な大学の子が来てくれています。インターン生は全体で20人ほどいます。

僕は、生き生きと仕事をしている人が好き

a.schoolの事業は多岐にわたり、小中高校生向けの探究学習塾の運営や、法人向けの教育関連コンサルティング事業などを行っている。その中でも、今年度グッドデザイン賞を獲得した「なりきりラボ/おしごと算数」という教材を開発した背景について迫った。

——「なりきりラボ」や「おしごと算数」というリアルな仕事を実践しながら学ぶ教材を開発されています。そこに懸ける思いはどのようなものがあるのでしょうか?

学校の学びが仕事や人生と、そんなにつながっていないことに問題意識を持っています。世の中で必要になる力って、学校で学ぶことだけじゃない。「子どもの時からこういうことをやっていれば」と思うことってたくさんありますよね。また、将来何がしたいかって、国語や算数だけやっていても見つからないんですね。学校と社会の距離が遠すぎるんじゃないかなと思っています。

僕は生き生きと仕事している人が好きなんです。研究者でも起業家でもどんな仕事でも、「この人はこの仕事のここに拘りがあるんだ」と話を聞いていて刺激になります。同じように、「これってこういうところに役立つから意味があるんだ」「こういうところに面白さがあるんだ」ということを子どもたちが発見しながら学んで欲しいと思い、「おしごと算数」と科目横断型の「なりきりラボ」を作りました。

——グッドデザイン賞を受賞されましたね。デザインや発信力に力を入れられているのではないでしょうか?

おしごと算数の中でも、「コンビニ店長」というプログラムがすごく盛り上がるんです。PL(損益計算書)を子どもたちがつけたり、収支管理や在庫管理をしたりしながら計算を使うんですけど、そういうコンセプト自体が世の中にないですよね。いくらいい授業を作っていても、ちゃんと分かりやすく面白そうに伝えないと伝わらないなとずっと思っていたんですね。

ようやく中身が整ってきたので、1年ほど前から伝え方に力を入れ始めました。デザイナーやクリエイターを入れることで、外側(コンセプト・ビジュアル)のデザインができたのが一つの成果です。実は教材だけじゃなくて、講師向けの研修や情報交換の仕組みも設計していたので、教材から講師育成の仕組み、デザインまでが揃って初めて、サービスの骨格ができた考えています。グッドデザイン賞の対象にそもそもこういう仕組みが当たるのかどうかすらわかりませんでしたが、とりあえず出してみたら結果的に評価いただけました。

——経済産業省が運営する「未来の教室」事業に参画されていますね。今後はどのようにこのビジネスモデルを広げていくのでしょうか?

具体的にやっていることとしては、教材だけではなくて教える仕組みの開発や、ファシリテーターの育成です。新しいやり方で子どもたちの好奇心を育成したいと思っても、今までの授業をやっている先生からしたら変化についていくのは大変なことなので、教材と先生を育てる仕組みがあるとだいぶやりやすくなると思います。この仕組みを全国に展開していく事を考えています。

教室や人材などの固定費を自社で抱えると投資が必要で重たいビジネスになってしまいます。そこで、得意なプログラムや人材育成だけに特化して、既存の塾、学童保育、保育園、企業内新規事業などのパートナーと連携して、私たちの目指す学び教育のあり方を共に広げていきたいと思っています。良い学びの普及をコンテンツドリブンで進めていきます。

僕自身は研究開発肌なんですね。半分経営者で、半分クリエイターなんですよね。a.schoolに集まるメンバーには2つのタイプがいて、1つ目は現場で子どもたちと触れ合って育てていくことにモチベーションを感じるタイプと、2つ目は研究開発が得意で授業設計にこだわるタイプです。結構後者のタイプが多く集まっているので、コンテンツドリブンで行きたいと考えています。

——東大入試や2020年の入試改革について、どのように考えていらっしゃいますか?

正直、どうでもいいですね(笑)。

文科省が教育改革をするのはいいことだし、コンセプトはいいと思っています。今までの知識主導型から、思考力や生きる力全体を育んでいこうという方針で動いていることはいいことだと思っています。

しかし、現実は揺れ動くんですね。お題目はいいけど実現されなかったり、一回動いたけど戻っちゃったりします。教育の現場って、変えたくない人もたくさんいるんです。ずっと教員しかやっていない人もいるし、新しいことをやる余裕のない先生もいます。公教育の変化はゆっくりとしか進まないと思っています。

それでも、ゆっくりと良い方向に変わってきている気がしているのであまり気にはしていないですね。a.schoolは受験を気にした教育をする気はないですから、ちょっと距離をおいてみています(笑)。

実際は、a.schoolで磨いているような力って、新しい入試に繋がる部分が多いと思います。保護者の中でも、受験を見据えてa.schoolに通わせる方もいらっしゃってそれは嬉しいですね。でも、受験に接続しすぎると「新しい受験塾」になってしまうので、受験とはやはり適度な距離感でやっていきたいですね(笑)。

インターン生は意外と教育学部ばかりじゃない

——教育に興味のある学生が多くインターンをしているのでしょうか

今まで、インターン生には主に授業に入ってもらい、子どもたちの探究をサポートする役割(メンター)をお願いしていました。しかし、a.schoolの事業拡大に伴い、これからは教えるだけじゃなくてプラスαの部分もどんどん担ってもらおうとしています。

ワクワクと学ぶのが好き、自分自身も探究したいという子が多いですね。意外と教育学部ばかりというわけではなくて、学校の先生になる人が多いわけでもないです。「教育は大事なんだけれど、学校や受験だけが正しい教育じゃないんだよな」という想いを持って、モヤモヤしていて、新しい学びづくりに挑戦してみたいという子たちが来ますね。

2月ごろ、年度の切り替わりに伴い学生インターンが多く入れ替わるので、インターンしてみたいという方がいれば是非応募をお待ちしています。

取材メンバーと撮影していただいた。
取材メンバーと撮影していただいた。
岩田拓真
 株式会社a.school(エイスクール)代表取締役校長。1985年京都に生まれ、滋賀で育つ。京都大学総合人間学部卒、東京大学大学院工学系研究科修了(専門分野は、脳科学とイノベーション)。大学院在学中に、ひとり親家庭に対して動機づけ教育を行うNPO法人Motivation Makerを仲間とともに創業し、理事に就任。Boston Consulting Groupにて経営コンサルタントとして勤務した後、a.schoolを創業。探究学習の塾「a.school」を運営するとともに、様々な創造的な教育コンテンツの開発に携わる。自分自身も新しいことを学ぶのが大好き。一児の父。
【インターン】週1日からOK、探究心が強い人の応募を待っています!

 a.schoolで現在募集しているインターン業務は以下の通り
● メンター
子ども4人に対して1人のメンターがつき、ファシリテーションを行う。一人ひとりに合わせた好み、個性、行動特性を見ながらサポートをする。スキルは1から教えていただける。

 メンターの業務に加えて、インターン生それぞれのやりたいこと・得意なことに応じて、以下の仕事を裁量権を持たせながら任せてもらえる。もし得意なことがあるならば、a.schoolでその力を発揮してみないか。苦手な仕事を任せられることはないので、応募時のスキルは不問だ。

● 企画
学習教材やプログラムの制作。外部企業へのコンサルティング案件も。
● ライター・編集者
自社メディアにてビジョンや事業の中身、ゲストとの対談を発信。
● デザイナー
発信力の強化に伴い、パンフレットやウェブサイトなどのデザインを担当。
● フォトグラファー
広報・記録のため教室で子どもたちの写真を撮影。
● 動画編集
「めっちゃ来てほしい」とのこと。

 「教育やる人にはいいトレーニングになること間違いない!」と岩田さん。プログラムは面白いし、個に合わせたサポートは徹底して行う教室なので、観察力やファシリテーション力がつくことは間違いない。成長を求める学生は訪問してみてはどうだろうか。

インターン応募はこちら(外部サイト