「HONGO AI」イベントレポート!

2019年10月、「本郷バレー」を象徴するイベントが誕生しました。

HONGO AI、注目の次世代AIスタートアップが集結し、プレゼンを行うコンペティションです。

今回はその概要とともに、このイベントがどう「本郷バレー」を象徴するイベントとして、今後も大きな影響力を持ち得るのかレポートします。

東大の伊藤謝恩ホールにて開催、平日にもかかわらずほぼ満席。

背景ーAIの聖地を目指す本郷バレー

まず、「本郷バレー」というワードが聴きなれない学生もおられると思うので、少し解説します。

既に過去の記事でも取り上げた通り、本郷には東大関連スタートアップが次々と誕生しています。この集積している様子は、シリコンバレーのようなスタートアップが集積する地に本郷がなりはじめており、またスタートアップエコシステムの関係者もシリコンバレーのように集積する地域にしていこうという意味で「本郷バレー」という名称が使われてきました。(編集補足:OOバレーについては、都内だけでも、他に渋谷のIT企業群を指すビットバレーやスタートアップが集まりつつある五反田を指す五反田バレーなどもある)。様々な分野の企業が誕生していますが、特にAIの分野に関しては、松尾豊先生がアカデミア方面から人材育成、起業促進について強力なリーダーシップを発揮し、AI関連企業が生まれる風土が出来つつあります。「本郷バレー」はこれまで、という意味でつけられた名称ですが、現在は、日本においてAI関連企業の聖地になりつつある東大本郷キャンパス周辺という文脈で使われるになってきています。さらにDEEPCOREやDEEP30と言ったAIに特化したインキュベーション施設やVCが誕生しており、昨年にはSoftBankと東大が共同でAIの研究所を設立するなど益々盛り上がってきています。

本郷バレーを皆で盛り上げる

このイベントの象徴的な特徴は代表幹事が投資組織7社(株式会社経営共創基盤(IGPI)、株式会社ディープコア、Deep30投資事業有限責任組合、株式会社東京大学エッジキャピタル(UTEC)、TomyK Ltd.、東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(UTokyoIPC)、ANRI)が自分たちの利害関係なしで、審査も主催のNEDOや産学協創本部に任せるという太っ腹な構え方で開催したことです。上記の投資組織はいずれも本郷のスタートアップエコシステムでも重要な役割を果たしている、果たしつつある投資組織ばかりで、本来自分が支援するスタートアップに箔をつけてもらいたいところもあるはずのところを、利益関係を一旦置いて、本イベントを通じて本郷バレーを本気で盛り上げようという心意義が伝わってきます。

代表幹事の皆さま

今回のイベントは東大関連スタートアップに限定せず、プロダクト開発中のアーリーステージを中心にAI関連技術を利用している企業14社がプレゼンを行いました。

登壇した企業は以下の14社

AIQ株式会社、インスタリム株式会社、株式会社ACES、株式会社estie、MI-6株式会社、株式会社科学計算総合研究所、Xamenis、株式会社シンカー、株式会社スペースシフト、ソシウム株式会社、株式会社DeepX、株式会社日本データサイエンス研究所、Mantra、株式会社RevComm

各企業の説明については東大新聞のこちらの記事より。

白熱したプレゼン

フィリピンで安価な義足を開発・提供するインスタリム社のAI活用

各社、質疑応答含めて10分ほどで思い思いに自社の製品やサービスをプレゼンされました。筆者が共通して感じたのはビジョナリーな部分よりも如何にAIの技術を織り込んだ自社の強みがあるのかを上手く示しているという点です。少し前に起きたAIブームで見られたバズワードとしてとりあえずサービスに盛り込まれるAIではなく、深層学習や強化学習をこれまで解決不可能だった問題に応用してソリューションを提供できるかを具体的に示したプレゼン内容が多かったです。登壇者の多くが既存産業の課題を如何にAIが解決していくのか、新しい未来を提示しており、素直にワクワクする内容でした。ビジネスモデルやAI自体に精通した審査員からの鋭い質問に対しても登壇者は歯切れよく話していました。

途中のセッションも充実のラインナップ。

「深層学習ビジネスの未来」というセッションでは、「本郷バレー」の発展をアカデミアよりけん引し、自身の研究室発のスタートアップを多く抱える松尾先生よりご講演がありました。スタートアップと併せて海外と比較して足りていない分野特化型VCがより求められていく旨が述べられ、道程こそまだ長いものの、今後さらに本郷がAI分野で強みを発揮していくための道筋が見えてきていると感じられました。

松尾 豊先生から日本のAIビジネスの未来について


パネルディスカッションでは「世界からみた日本のAIスタートアップ」という題目で行われました。本郷のスタートアップエコシステムの東大が関わる部分の多くをプロデュースしてこられた東京大学産学協創本部の各務先生がファシリテータとなり、松尾豊先生、DEEP COREやANRIも支援されているMisoletoe株式会社のファウンダー孫泰三さん、AI開発企業としては日本唯一のユニコーン企業であるプリファードネットワークス代表取締役社長の西川徹さんという非常に豪華なメンバーで行われました。

豪華メンバーによるパネルディスカッション

日本のAIスタートアップが世界で闘えるようにするにはどうしたらよいかという議論が白熱しました。研究成果や技術自体は世界に比べて遜色がない一方で、ビジネスモデルや戦略が国内に閉じ、日本市場に特化する余り、海外市場に向かなくなってしまう点や、商品の研究開発に必要な最小限の資金しか投入されない現状という問題点が共有されました。また、海外で食品会社やメーカー企業が世界中に工場をたて、売上を生んできたが、そのアセットをまだ活用できておらず、そこにポテンシャルがあるという発言も印象的でした。

優勝は10年かかる材料開発を3カ月まで縮めたMI-6

最終審査の末、最優秀賞を獲得した企業はMI-6。マテリアルインフォマティクス「MI」という材料開発xデータサイエンスの分野での研究を用いて、材料の特性を分析・評価し、最適な開発計画を立てるという事業内容です。従来10年かかっていた実験成果を三カ月で超えることができるようになるとの結果も示しており、AIの威力を日本が得意としてきたものづくりの分野でも見せつけた企業が優勝を勝ち取りました。

MI-6の技術顧問は東大の津田先生

賞は審査員で調整が無かったため、重複が生じうる中での審査でしたが、見事企業賞三冠となったのは、漫画の多言語翻訳システムを開発中のMantra。

蛇足的ですが、このMantraはアントレプレナー道場、本郷テックガレージ、FoundXの利用者、CEOはKERNELのメンバーと、東大周辺スタートアップエコシステムの生え抜きともいえる企業が受賞したことは後進のスタートアップにとっても、大きな意味があると感じました。

HONGO AIを登竜門とするAIの聖地へ

受賞した企業にコメントを貰った際に、他の企業の取組を知って業界の盛り上がりの中で切磋琢磨していきたいという声が多かったことが印象的です。応用分野は違えど、ライバルを認識できるイベントという意味では勝ち負けだけのビジコンとは少し違った様相でした。そして、イベントのコンセプトである「もっと注目されてもよい企業に光をあてる」ことに沿うように、大企業からの参加者も多く、プレゼン合間でのブース展示もそれまで誰も行かなかったブースにもプレゼン後に人が集中しており、その狙いは実現されていました。

総合して、今回のイベントは、まだ自社のシェアを確立していないシード期のAI関連企業が自社のAIを交えた強みが大企業もいる観客に対して十二分に伝える機会となったことでしょう。そして、優勝や入賞に関係なく、今回登壇した企業全てが各業界を改変するほどの力を持ち得ると感じました。本郷バレーが日本にとってAIの聖地となり、HONGO AIがその登竜門となる未来もそう遠くないのではと。

代表幹事で発起人であるIGPI代表取締役の川上登福さんにお伺いした所、今年も開催予定とのことで、今からどんな企業が登壇するのか大変楽しみです。

最後に編集部より、東大関連スタートアップに関わるイベントは積極的に取材し、レポートを発行する予定です。取材依頼はお気軽にdiscovering.hongo@gmail.com までお願い足します。