2月のホットな東大関連スタートアップニュース

こちらの記事は月に一回ほどのペースで、東大関連スタートアップに関してDiscoveringHONGO編集部が独断と偏見で取り上げるべきというニュースについて、簡単に概要を紹介するまとめ記事になります。多方面で東大関連スタートアップに動きがありますが、こちらの記事を読めば一通りそれらについて把握できるはずです。記事で紹介できていないニュースは公式ツイッターでも発信しておりますのでそちらをご確認ください。

1.企業との連携強化ー研究所の設立関連

a. RIISE(インクルーシブ工学連携研究機構)設立

実は東大には連携研究機構が27個も存在する。

インクルーシブ工学には「誰もが技術革新の恩恵を承けられる包接的な社会の実現」という意味が込められているとのこと。そのために、実現すべき未来を研究テーマに分け、工学系研究科、新領域創成科学研究科、情報理工学系研究科、情報学環、生産技術研究所、先端科学技術研究センターの6部局から技術を持ち寄り、新たな組織を研究部門という形であてがう、というダイナミックな機構になるとのことです。各研究部門では、寄付研究部門、あるいは、社会連携研究部門という形で産業界と連携を測りながら、新しく着任する特任教授が責任を持ち、研究・教育を進めるとの事。既に起ちあがっている研究として、メルカリの研究開発組織「mercari R4D」と研究部門「価値交換工学」が設置されました。Forbesでの対談によると、これはRIISEの初代機構長となった川原圭博教授が以前からmercari R4Dと共同研究していた縁から成立した模様です。メルカリの「売ることを進化させたい」というニーズに対して、価値交換に関するテクノロジーを幅広く研究する「価値交換工学」の成果やシーズの導入という、実践的な研究開発を行う予定です。こちらの研究内容や機構の詳細について紹介するシンポジウムが予定されていましたが、新型肺炎の影響で延期となったため、2月28日現在、全貌はまだ分からないままです。価値交換に関するテクノロジーとして、ブロックチェーンが挙げられており、東大で本格的にブロックチェーンを社会応用に生かす研究開発が推進されるきっかけとなるかもしれないので要注目です。

b. Beyond AI研究所設立

『Beyond AI 研究所』における研究と事業化のエコシステム
AI研究の世界最高レベルを本郷に、そしてその研究成果の事業化を見越した連携

ブロックチェーンよりも社会応用が既に進んでいるAIについても、東大はソフトバンク株式会社と連携し、研究所の設立を昨年12月に発表しました。こちらは、「Super-AI」と呼称された世界最高レベルの研究者を招聘して、基礎研究を世界最先端のものにしていこうとしていること、そして国際的にも評価される東大の物理学や医学分野の研究者が加わってAIと異分野を基礎研究レベルで掛け合わせようとする「Hybrid-AI」が大きな特徴と言えるでしょう。また、経産省が整えているCIP(技術研究組合)制度を利用し、研究開発段階でもソフトバンク株式会社とジョイントベンチャーを創設し、加速的に行われる事業化を進める社会応用研究に取り組む模様です。共同研究に参加する人員は150人、事業規模は10年間で200億円を見込むとのこと。大型の研究所が今年の春には本郷に、冬には竹芝に開所される予定で、続報が待たれます。

 そのほかにも東大は、TSMCと先進的な半導体研究について全学レベルでの産学連携を、IBMとは量子コンピュータについて世界初の量子システム技術センター開所をそれぞれ予定しています。、こうした大型の連携にも今後の展望に注目が集まっています。

そして、活発になる 産学連携に東京都が促進を支援する動きが生まれました。

2.東京都が経団連や東京大学などと、共同事業体「スタートアップ・エコシステム 東京コンソーシアム」設立

これは、東京を国家戦略「スタートアップ・エコシステム拠点形成戦略」の対象となる世界的なスタートアップエコシステムの都市に選定後、スタートアップエコシステムの形成促進、ならびにスタートアップ創出に向けた産学官の連携強化を行う事業体となる模様です。この事業体の動きかどうかは把握しきれませんでしたが、早速、2月21日にNTT東日本と東京大学、東京都が5Gの活用に向けた研究と実証実験で協定を締結しました。これらの動きから、既存企業と大学の連携で、市民向けサービスの開発を進めるスタートアップの創出が増えると推測されます。

3.東大関連スタートアップが全国的、国際的なアワードを受賞するニュースが続きました。


a. 株式会社MUJINが日本オープンイノベーション大賞にて内閣総理大臣賞受賞。

受賞内容はロボット企業大手8社と取り組んだ、異なる会社の機械に対しても統一制御を可能にするMUJINコントローラの開発。用いたモーションプランニング技術がMUJINのコア技術の一つで、これによりティーチレス、つまり動きをプログラミングで制御する必要なく、動かせることを可能にしました。ロボット操作を統一、簡便化するだけでなく、これまでロボットがプログラミングを必要としていたために入りづらかった産業への導入も可能になりました。ロボット大手と協業して、実際の工場での案件で導入実験を行い、効率的・効果的に開発し、大手も手を付けられなかった新しい市場を開拓した点が評価されたとの事。おめでとうございます。オープンイノベーションについては、Lab-Cafeの元オーナーであり、東大関連スタートアップ株式会社エレファンテックの取締役副社長、杉本さんの先日公開されたインタビューに出てくる忠言が面白かったのでご興味ある方は是非ご一読を。三井化学の名古屋工場内に自社製品の量産ラインを起ち上げるなど大企業との協働を進められる一方で、「みんなで集まってイノベーションごっこをやったって意味がない。一緒に稼がないとスタートアップは死んでしまう。」という発言は、今後産学連携を進める機運がより高まる中でのスタートアップが注意すべき重要な点を指摘していると感じました。

b. CESで株式会社Xenomaがイノベーションアワードを受賞

ところ変わってラスベガスで1月に世界的な評価を得た東大関連スタートアップがあります。スマートアパレルを開発するXenomaさん。今回はラスベガスで開催された世界最大の家電見本市CESで出展されてるもののなかでも特に優れた製品に送られるCES 2020 イノベーション アワードを「アクセシビリティ部門」で受賞されました。受賞製品は、なんと高齢者を対象にしたパジャマ。着るだけで睡眠の質を分析するだけでなく、日常的な振る舞いや落下を検知可能です。商品はURBAN RESEARCHとの共同開発で、5月に日本で発売されるとの事(価格未定)。

e-skin Sleep & lounge(CES 2020 HPより)


4.このような躍進を遂げる前のスタートアップと学生の繋がりについて、より強化するイニシアチブが生まれました。

a.株式会社POLが研究開発型ベンチャープランをリリース

登録者2万人いる学生に月4万円からアプローチ可能に

理系学生を研究内容に基づいてスカウトできるLabBaseを提供する株式会社POLが、研究開発型インターンを展開する企業を対象にインターン採用支援プランを提供開始しました。これは研究開発ですぐに活躍できる学生を狙い撃ちしてスカウトできるという意味ではベンチャーとして強力な追い風になる可能性があり、また学生側も卒業後に研究開発ができる環境を検討する上でのハードルが下がりやすくなります。

東大関係者向けインターン内容についても一部のものは充実度が増してきています。

b.ダイキンのグローバルインターン今年も開催へ

また、東大生向けに世界一周型インターンを去年は提供したダイキンも今年度は10人の学生、研究者を選抜し、それぞれ個人の要望に合わせたダイキンの海外拠点で数か月から半年にわたるインターンを提供することを決定しています。

またインターン以外でも、業界の最前線に触れることが出来る機会が増えてきています。

c.株式会社フィナテキストの自主講座が正式科目に

金融業界で盛り上がるフィンテックの今を学びたい大学院生にとっては嬉しい動きがありました。東大関連スタートアップのフィナテキストが2017年より自主開講してきた講座が2020年度より、大学院工学系研究科の科目「システム創成学特別演習4」として正式科目になりました。金融政策の担当者やAI企業の技術責任者などが講師を勤める講座について、条件を満たせば単位も来ることとなりました。海外大学では、卒業後の仕事において求められるスキルを履修した授業で補えているか確認できる学生向けのサービスなどもあり、実学的な学びができる環境へと大学の教育内容も広がる中で似たサービスが登場するかもしれません。

参考

1. 研究所の設立等

 インクルーシブ工学連携研究機構

・ホームページhttps://www.riise.u-tokyo.ac.jp/

・メルカリが東大と連携https://forbesjapan.com/articles/detail/31555

 BeyondAI研究所

 ・東京大学とソフトバンク、世界最高レベルの知と人が集まる「Beyond AI 研究所」に向けた協定を締結

 その他の産学連携

・東大とIBM、量子コンピュータ「Q」を日本で運用https://japan.zdnet.com/article/35147153/

 ・東京大学・TSMC先進半導体アライアンスについてhttps://www.u-tokyo.ac.jp/content/400127684.pdf

産学連携全般について

 ・産学連携、東大の手腕注目、成功モデル示せるか。(日経産業新聞 2020/1/27付)

2.スタートアップエコシステム東京コンソーシアム

 コンソーシアムの設立について(東京都)

https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/01/22/03.html

・東京都、東大・NTT東とローカル5Gで連携(日経新聞 2020/2/21付)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55939890R20C20A2L83000/

3.受賞関係/オープンイノベーション 

 Xenomaが示すスマートアパレルの未来https://ftn.zozo.com/n/ne13d0a802cc6

 CES 2020 INNOVATION AWARD PRODUCT e-skin Sleep & Lounge https://www.ces.tech/Innovation-Awards/Honorees/2020/Honorees/E/e-skin-Sleep-Lounge.aspx

4.学生と企業を結びつけるイニシアチブ

・POL研究開発型ベンチャープランhttps://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000052.000020282.html

・ダイキン、東大から研究者100人 知見取り入れ技術革新(日経速報ニュース 2020/2/22付)

・フィナテキストホールディングス、自主講座が東大の正式科目に。(日経産業新聞 2020/2/26付)