ARの未来をエンタメとクラウドの二刀流で切り拓く

ポケモンGOやIKEAのアプリなど身近な場面でも利用され始めているAR(拡張現実)。その可能性に懸けて、流行が生まれる街、渋谷でプレティア・テクノロジーズ(以後プレティア)はARの謎解きゲームを仕掛ける。

 エンタメだけでなく、それを支えるARクラウド事業を開発し、セットにしてARの価値を証明しようとしている。グローバルなメンバーを抱えるプレティアの会社としての取組とビジョンを、代表取締役の牛尾湧さんに丁寧にかつ熱く語ってもらった。

基本概要
 CEO 牛尾 湧 
 設立 2014
 出資 インキュベイトファンド、Tokyo XR Startups、セガサミーホールディングス、オー・エル・エム・ベンチャーズ、國光宏尚氏、佐藤裕介氏、塩田元規氏など
 社員 約40名

サービス(どういうことやってる会社)
AR 技術を用いた謎解きゲーム、AR クラウド事業

ビジョン(何を目指しているのか)
共に達成する喜びを届ける

ワンポイント(サービス、ビジョンかいつまみ)
 近年目覚ましい発展を遂げている「何もないところでも魅力的なコンテンツを出現させることができる」AR技術を利用して、渋谷を舞台として謎解きをする「サラと謎のハッカークラブ」を始めとするリアルエンタメ事業を展開している。それだけでなく、独自のARバックエンド技術を研究開発し、ARアプリが抱える技術的な困難を克服する ARクラウドも同時に行っている。先日、2020 年1月 21 日から大人気アニメ「PSYCHO-PASS」のAR謎解きゲームを開催中。

ベンチャーヒストリー 
AR事業に取り組む前に、政治政策コンサルティングやITファッションメディア、VR旅行など様々な事業からピボットを幾度かしてきたが、それらの苦しい体験から今のバリューである「Grow true happiness」「Produce meaningful impact」などに行きついている。

 

テックは手段でしかない。何となくAR×なんとかでは死ぬ

――今まで一番失敗した体験は?

プロダクトづくりですね。ARのように、トレンドになっているものに乗っていれば成功するのではという漠然とした期待をみんな持ちがちだと思います。でも、やっている中でやはり、喜ばれるものをつくれないといけないと体感しました。テックは手段でしかない。なんとなく AR×なんとかでやっていると死ぬなと。良いものをいかにつくっていくかを真摯に考えないといけない。自社ならではという独自性なしには、事業も大きくならないです。今の形は、新しいテックにはることと、目の前の人を幸せにするというバランスを考えて行きつきました。

プロダクトに関しては、AR領域に参入する前も含めて失敗を幾度かしたことで、プロダクトを見る眼が何次元も養われ、今のようなARエクスペリエンスをつくるときにはある程度肌感覚が身についていて、結果的に良かったと思っています。

 ――東大との繋がりについて教えてください

僕らの事業はARコンテンツとARクラウドの開発の二本ですが、HCI(Human Computer Interface)と言われる研究領域が関わっています。東大にも何個かの研究室が取り組んでいて、そこに所属する学生が一定来ています。もう一つ、自動運転やロボティクスでも使われるテクノロジー領域の、コンピュータビジョンというコンピューターの目をつくる、画像処理を含む技術を、 基礎技術であるARクラウドの開発に使っています。コンピュータビジョンに関わる研究室出身生も同様に繋がりがありますね。働いてくれている学生の中ではエンジニアは半分くらいで、残りのメンバーは経済学部系が多いです。

10か国籍以上からなる国際色あるメンバー構成

メンバーの半分が外国人、会社の公用語は英語

――社員の半分近くが外国籍の方ですが採用については何か工夫されていますか?

クラウド事業での強みは、必要な人材が集まってくるループが出来ていることです。

最初に面白いと言ってくれる人が集まってきていて、ある種のインナーサイクルができました。それによって、技術を使いきれる人材にアクセスできるようになりました。

国外からうちで働くために移住してくるメンバーも多数います。国内だけでコンピュータビジョンの専門家を集めようとするとかなり苦労します、当たり前ですが日本と日本以外だと、明らかに日本以外の方が専門家が多い。特に発信に力を入れている訳ではないのですが、中で働いている人にとって意義がある、納得感がある事業をやっていると、自然と既存メンバーの元同僚などが集まってきてくれます。今ここで働いてる人が、満足感を得たり、仲間と話してて楽しいという状態をつくることが大事だと思います。

外国人のメンバーが多くて結構難しいのが、カルチャーをつくる過程の PDCA をまわすことですね。初めての文化圏から来る人に最初に対応するときは、対応を誤ることもあるのですが、それを後に仕組みで改善していきます。

小さなアーリーステージのスタートアップとしてはやれることも限られますが、マンツーマンの会話でお互いのリスペクトを大事にしていれば、基本的にはどうにかなります。

――英語が会社の公用語とお聴きしましたが、、

最初に断っておきますが、日本人同士は日本語で話しますよ。笑

元からグローバルな市場に出ていくためにいずれは英語にしようと思っていました。外国籍のメンバーが初期からいたので、彼らに合わせて公用語を英語にしました。

カレンダーへの登録、メンバーへの連絡、全体へのアナウンスなどは英語ですし、普段のミーティング、Weekly Check-insと呼んでいるもの(注: 目標達成に向けての進捗確認、一週間の優先順位の宣言や部門間調整のミーティング)、またWins sessionと言って、その週の成果をデモする会議などは、全部英語でやっています。

インターンのみんなも入った初日から、拙い英語であっても自己紹介をせざるを得ないという状況になります。ただ、外国出身のメンバーのほうも、日本に来て日本語を学んでいる身なので、うまくしゃべれない人の気持ちはよくわかっています。

会社のカルチャーとしても誠実、悪いことが嫌いというのがあるので、英語できないことに対してクスクス笑う、みたいなことはないです。そのような環境で、英語を実践することを余儀なくされるので、入って半年くらいでだいたいみんな一定のレベルに達します。働いてる間ずっと留学中みたいなもんですからね。

人と人をつなげるARエンタメ

任天堂やディズニーのような哲学の通ったブランドを目指す

――今展開している二つの事業はそれぞれどういう風に伸ばしていきたいですか。

コンテンツ事業である AR エンタメについては、将来的には任天堂やディズニーの様な哲学のあるブランドを作りたいと考えています。

任天堂やディズニーはブランドとして一本の柱が通っていますが、そこにいたるまで実はいろんな試行錯誤を経てきています。最初からすごいものを作れた訳でなく、色んな失敗作も出していてあの境地に達している訳ですね。

いまこのタイミングはARが真新しいからいいんですが、ビジネスモデル先行でお金稼げるからといって有象無象のコンテンツをたくさん作ってしまうと、市場が成熟化した後に埋没してします。今は遊んでくれても、将来的に色々出てくる中で、お客さんからすると結局こいつらは他と何が違うのかとなってしまう。その中で、一本「これは共感できるな」という筋が通っているブランドがあると、お客さんがそのブランドを選ぶ価値も出てくるじゃないですか。

 そのために、我々は”共に達成する喜びを届ける”をミッションに掲げているのです。人と人が同じ空間で一緒に過ごして、それによって関係性が深まる、そういった人と人を繋げるコンテンツをつくる、という点で一本筋が通っているよねと言っていただけることを目指します。

これは最初から気を付けていないと、一回走ったものを後から変えるのは難しいと思います。 

困難でも真のインパクトを出すことを意識

――エンタメ事業のコンテンツは謎解きゲーム以外も考えていますか?

やっていきます。ARの技術は、Google やAppleが作ってくれるものがあり、また我々の開発するツールもあって、それらは住み分けされています。彼らが作ってくれたものに我々のものを組み合わせ、その時々で作れるものの種類がドンドン増えていく。

その時々でできるものを、エンタメに仕上げて届けていくつもりです。今たまたま我々が思っているバランス点が、このAR謎解きゲームだということです。

プラットフォームはエンタメ事業とセットにしてARの価値を証明する

プラットフォームの方に関しては、自社のクラウドで基本的に我々のコンテンツに落とし込めていき、いかに面白いユーザー体験を提供できるか結果を出して、 「ほら AR クラウドってすごいじゃないですか、お客さんも喜んでますよ」と証明しようと考えています。

そして、それを真似してARクラウドを使ってください、という形で市場に展開していきます。 

これが最初は上手く行かなかったのが VR 業界だと思っていて、VR ってプラットフォーマーが2016 年にハードウェアを出したのですが、コンテンツに本気で取り組んだ人が大手で全然いなくて、VR 元年は盛り上がり切れなかった、と分析しています。例えば新しいゲーム機って、基本的にこのタイトルをやりたいから買うとなるじゃないですか。VR はそのときこれやりたいというコンテンツが少なかったですよね。ハードウェアの値段が高かったという別の要因もあるのですが。

一方で家庭据え置きのゲーム機は基本どういう戦略だったかというと、任天堂が Wii を出した時もそうでしたが、「我々が責任をもってこのプラットフォームを盛り上げていきます。マリオ出します、ゼルダ出します」とやってきました。そしてお客さんも「マリオあるから Wii 買おう」となる。あんな一見不思議な形のリモコンも、ちゃんと使い方がわかるように、任天堂が率先してソフトで使い方を見せることで皆が楽しめる訳です。だからサードパーティーもついてきたんだと思います。

だから我々も、今でも 「AR って何に使えるんだ」と言われますが、その価値をみずから証明して見せてから他の人にもおすすめしていきます。

エンタメ事業と AR クラウド事業の二つのアイデンティティを一社で統合することは難しいですが、最初サービスメインだった会社が いきなりテクロノジーになるのも難しいですから、最初から取り組んでいます。ただでさえアーリーステージで資源も限られている中で、難しい挑戦になりますが、やりきった際のインパクトが大きいことが大事という会社の方針、” Produce meaningful impact 真のインパクトを生み出そう”

というのもこのような経営スタイルに表れています。

――今後の事業拡大について具体的な予定を教えてください。

採用も引き続き進めており、エンタメをつくるラインを増やしています。

それによって、同時につくるARエクスペリエンスを増やしていきます。

またR&D の能力も強化していますし、規模が大きくなってくるのでバックオフィスチーム(経理、人事、財務、法務)も拡充していくことで、会社が成⾧するための足支えを作ります。合わせて、人が増えてもカルチャーが散ってしまわないよう、ミッション浸透をすすめてカルチャーを整え直すこともやっていきます。

ぼくの起業家としての仕事も変わってきます。プロダクトのことだけでなく組織づくりも大事になっていく段階なので、そこに注力していきます。

 牛尾 湧
東京大学法学部卒業。兵庫県出身。過去に起業サークルの代表、株式会社センジュの立ち上げ営業を担当。オーストラリア・中国への長期留学も経験。'14年7月よりプレティア株式会社設立、代表取締役CEO就任。 

 

【インターン】 任されたものをやり切るという経験をしてもらうことが大事、究極的には一つのことを突き詰めて尖った人になってもらいたい

プレティアでは現在募集しているインターンは以下の通り
●Webエンジニア
セットアップや新機能の開発、最適化や運用 (2020年3月現在)

学生は10人ほどで大学初年度の学生も在籍、博士課程までいます。

 CEOの牛尾さんによると「任されたものをやり切るという経験をしてもらうことが大事、究極的には一つのことを突き詰めて尖った人になって貰えたい」として四半期ごとに部門で振り返り、各部門の責任者と2週間ごとで1on1Mtgなどの制度を設けている。

また、週四回以上勤務できるインターン生はマルチアサインという形態が適用され、複数の部門をみながら、密に連携が必要な部門同士の橋渡し、部門を横断してコミュニケーションが必要なものを担う。「色んなものにさわることができるため、興味が広がって新たな仕事に興味が湧き、そちらにメインの仕事を移していく人もいます。」ということもある。

専門性がある人は勿論、「凝った経験がある、スキルを極めることに結び付きそうな原体験を持っている人を求めています、後者は自分と話す中で見つかる人もいるので気軽に門をたたいてください」とのこと。

注目されつつある領域で、世界で通用するレベルのエンジニアになることを志す学生はぜひ門をたたいてみてはどうだろうか。

 

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