IoT普及の基礎を作る東大発スタートアップ SONAS

最先端の技術を採用した独自開発の無線通信規格によってIoT(Internet of Things)の足かせを取り払い、この領域で社会を飛躍させることを目指すソナス株式会社。研究から起業をした道のりと、今後のビジョンを代表取締役の大原さんに伺った。

ソナス株式会社

基本概要 
代表 大原 壮太郎 
設立 2015年11月

サービス (どういうことやってる会社)
革新的なデータ転送技術を採用したマルチホップ無線UNISONet(ユニゾネット)の開発およびUNISONetを活用したシステム・サービスの企画、設計、製造、販売

ビジョン (何を目指しているのか)
「魅惑的技術で社会の礎を成す」ソナスという社名は「礎を成す」という言葉に由来しています。ユーザーを魅了するテクノロジーを時代を超えて提供し続け、人々の生活を支える「未来の当たり前」を創ることを目指しています。

ワンポイント(サービス、ビジョンかいつまみ)
IoTは大きな期待をかけられている一方で、無線技術が足かせとなり、その可能性を十分に発揮できていない現実があります。開発者もユーザーもワクワクするような高性能な無線技術で各種産業がIoTの恩恵を享受できるようサポートし、社会を飛躍させることがミッションです。

東大での研究から始まった事業

――東大での研究から起業へ至ったと伺っていますが、具体的にどのような道のりだったのでしょう?

私自身が起業を考えるようになったのは、大企業に就職した後のことです。より成長できる場を求めて会社を辞め、起業を考えました。起業アイデアを求め、学生時代にいた研究室に話を聞きに行ったのが現在のソナスの始まりのきっかけです。研究室では私の学部時代から、無線センサーネットワークの研究を行っていました。研究室を再訪した際に、CTOの鈴木が取り組んでいた無線ネットワークの研究が画期的で面白いと思い、これで起業する決心をしたんです。技術的に優れており、ビジネス面から見ても、市場に受け入れられるものだと思ったためです。それから、起業の準備期間として一度大学に戻り、約1年3か月の間鈴木と一緒に研究を行いました。鈴木は大学でこの研究を続ける中で、「社会に出したい技術だが、一人で起業するのは難しい」と思っていたところに私がやってきたので、一緒に起業を目指すことになりました。

――研究について詳しく教えていただけますか?

鈴木が研究室で取り組んでいたのは、センサーで取得したデータをバケツリレーのように繰り返し転送して目的の端末まで送る、マルチホップと呼ばれる種類の無線通信の開発です。その中でも我々の無線通信は、データの転送に「同時送信フラッディング」という画期的な転送方式を採用しています。従来、センサーのデータを無線通信で送受信することは、非常に難しいものだと思われていました。センサーやIoT機器のための無線通信では、バッテリーで長時間駆動する必要があるため省電力性が重要、などの技術的制約が多く課せられているからです。そのため、通信が安定しない、データが部分的に消失するなどといった問題が多く、実用に耐えられる技術がありませんでした。ところが、「同時送信フラッディング」を用いると、安定且つ省電力な無線通信を実現することができます。2011年にこの技術に関する論文が海外で発表された後、私たちは2017年3月まで大学で実用化のための研究を行いました。そしてこの新たな無線通信規格が、「UNISONet」としてソナスの事業の核となっています。

(「同時送信フラッディング」とは)複数のノードから同一データを同一タイミングで受信させることで、致命的な電波干渉を起こさずに無線通信を行う技術。これにより、通信経路の制御を複雑にせずとも、通信を効率的に行うことが可能になる。

UNISONetの仕組み

――大学での研究と会社での事業のどちらも経験されていますが、その違いについて教えてください。

研究では、何度も繰り返し実験を行うことができますが、会社の事業となると、品質が要求されます。現地で通信が停止するとなると、会社の信用問題にも関わるからです。実用化までの研究段階では、品質を向上させるために何度も実験を重ね、技術を育ててきました。

 実は東大在学中に社会基盤工学の研究室と合同で、実装に関する研究も行いました。私たちが研究していた無線通信のアプリケーションを使って、橋の振動モニタリングを行ったのです。技術研究だけでなく、このような実装の経験ができたことも、大学で研究していてよかったことだと思っています。

今でも東大との繋がりは続いており、それが本郷にオフィスを置いている大きな理由にもなっています。

研究開発はオフィスと同じフロアの一角で今も行われている

ソナスが解決している課題

――ソナスの現在の事業について詳しく教えていただけますか?

ソナスの現在のミッションは、IoT無線の使いづらさを解消し、色々な産業がIoTの恩恵を受けられる世の中を作ることです。

たとえば、構造物モニタリングなどにUNISONetが活用されています。構造物モニタリングとは、橋などの構造物に設置したセンサーを用いて、加速度等を測定し、構造物の動きを解析する手法で、建物の老朽化を調べたり、構造物の挙動を工学的に研究したりする際に役立ちます。この際、広い範囲に設置したセンサーから消失のないデータを集めることが非常に重要となります。このデータの収集に一般的には有線での通信が行われてきましたが、数百メートルあるケーブルを手作業で設置していくことは非常に大変なことです。ここにUNISONetを搭載した計測システムを導入することで、配線などの不便を解消し、広範囲に設置されたセンサーのデータを効率よく集めることができるんです。

また、例えば構造物モニタリングに関しては、この領域の専門的な知識を持つゼネコンが我々が集めたデータの分析を行っています。このように、ニーズやノウハウを持っている他企業と連携して事業を行い、それぞれの用途に合わせたIoT技術の提供を行っています。IoTは、一社の技術だけで成立するものではなく、いくつかの企業がそれぞれの得意な技術を出し合ってこそ成立するものなのです。

他には、工場機械の監視などへの導入例もあります。工場の機械の稼働情報を収集して分析することで、作業過程のどこがボトルネックになっているのかを調べることができ、作業効率を向上させることができます。電波が届かないような現場や、工作機械が多く存在する工場などではUNISONetは既存のものと比べて有効に機能するので、そのような現場に利用していただいています。

UNISONetに興味を持ってくださる方は多く、普及のためにも広く使っていただきたいと考えていますが、時には他社の製品をお薦めすることもあります。これは、お客様の要件に見合うIoT技術を提供したいという思いがあるからです。

ソナスが描くIoTの未来

――既に様々な課題を解決されていますが、今後解決していきたい課題は何でしょうか?

UNISONetをグローバルスタンダードにすることです。技術的な面での向上だけでなく、実際に社会で使われていくことが重要だと考えています。UNISONetがその力を発揮できる居場所を見つけ、実装していくことを目指しています。そのために、自社だけでなく様々な会社がUNISONetを利用できるように技術的な改良を行い、ある程度規格をオープンにしていきたいと考えています。

―それでは、海外への進出も考えられているのでしょうか?

はい、海外での販売も話が進んでいます。しかし、世界への進出は困難な道のりです。海外進出には大きな発言力が必要ですが、日本企業が主体となっている分野は少ないのが現実です。そのため、地道かもしれませんが、国内外の企業とアライアンスの形で連携し、UNISONetを世界に広めていきたいと考えています。

また、スタートアップとして、常に新しい挑戦をしていこうとも考えています。コアになる無線通信技術への経営資源投下は続けながらも、通信やネットワークに関連した応用技術などの開発も行いたいと思っています。

ーーソナスが考える、IoTの未来について教えてください。

そもそもエンジニアリングは人間の手間を省くためのものです。IoTが当たり前のように使われるようになり、自動化が進めば、人間は創造的な物事に集中することができます。ユーザーがワクワクするようなIoTの未来を作っていきたいと考えています。

ソナスでのインターン

――最後に、学生のインターンについて教えていただけますか?

ソナスでは、年に一回、夏季インターンを募集しており、毎年5~6名の方に参加してもらっています。インターンを通して、学生の方に成長してもらうことを重視しており、レベルも幅広く設定しています。過去には電気系の専門的な技術を持った優秀な方もいて、コアの技術に関わってもらったこともありました。一方、「電子回路やプログラミングが好き」「 Raspberry Piを触ったことがある」といったレベルの方にも参加してもらっています。夏季インターンで大きく成長された方は、アルバイトとして継続的に雇用することもあります。

 大原 壮太郎 東京大学大学院工学系研究科修了後、ソニー株式会社にて5年半、半導体開発に従事。東京大学先端科学技術研究センター勤務を経てソナス株式会社共同創業、代表取締役就任。 
【インターン】年に一度、夏季インターンを募集。学生の成長を重視し、レベルを幅広く設定。