UTokyo Project Sprint注目のチーム

 前回の記事では、突如起ちあがった学生企画としてUTokyo Project Sprintの概要とその参加者から上がっている声から企画の全貌に迫った。それでは、どんなチームがこのプロジェクトから起ちあがっているのだろうか。今回の開発を進める81チームのうち、Discovering HONGOが独断と偏見で注目し、快く取材に答えてくれた12チームについて以下、簡単に紹介する。

おうちで実験集

 サービス内容:科学実験の一覧検索サイト 

 東大の科学サークル「CAST」に所属するチーム代表が、元々感じていたが新型コロナ下で顕在化した課題にアプローチしている。

 その課題とは、現在は学校が休校となり、基本的に家にいることしかできない子どもたちは、ゆっくり面白さを感じること、何かを発見する機会が確実に減っていて、実験教室が一部、オンラインに移行できたものがあるものの、殆ど開催できておらず、そのような機会を提供できていない。新しいサービスでは、これまで実験教室が身近でなかった層にもリーチすることを目指す。

 また開催できる実験教室には地理的にも回数にも限界があり、自分達学生や全国の科学館スタッフ、学校の先生が抱える秘伝の種が共有されきれていないことだ。科学実験は実際にやってみてもらって子どもたちからフィードバックを貰えないとやりがいもないし、意味もなくなってしまう。実験主催側が抱える問題にも実験教室の一覧化によってアプローチする。

 既存のサービスでは欠如していた検索可用性と、ユーザーからの各実験へのフィードバックをしやすいウェブ設計を目指して、現在は開発を進めている。本プロジェクトが終了後も、全国で利用者を増やせるように、身近な人たちに実験をアップロードしてもらうなどして巻き込んでいく。

サイトはこちらより

筋肉マン育成サイト

 サービス内容:自宅用筋トレコミュニティサイト

 思いついたきっかけはZoomのライセンスが大学から与えられ、色々遊んでいたとき。友達内で筋トレを一緒にやってみたときにその面白さに触れ、思いついたという。メンバーは筋トレが元々好きだったり、詳しくなかった訳でないが、運動不足をきっかけに筋トレに励むようになり、そのモチベーションの維持が大事だと痛感した。

  筋トレでのモチベーションを維持できるように、タイマーで成果を管理しつつ、友達とその結果をシェアできるコミュニティ機能を開発中ということだ。新型コロナによって生まれた現状に対してもみんなでコロナに対処していく、というチーム代表の姿勢が開発内容にも現われているようだ。

  自分達が欲しがるサービスとなるように、視覚的におしゃれなものを目指している。本プロジェクト後も開発を続け、行く行くは冷蔵庫に残った材料から献立を導くレシピサービスかのように、鍛えたい部位を複数選択すると筋トレのメニューを自動で作成してくれるものを目指す。

PPP(パクツイぷんぷんポリス)

 サービス内容:Twitterでのパクツイ報告サービス・数学に特化した掲示板

 このチームでは、当初Twitterで横行するバズツイートのパクツイに対して、独自のバズツイートデータベースとの文面での類似度からパクツイを検出し、Twitterで報告するというものを考えていた。しかし開発中にバズツイートにおける

画像ツイートの多さに気づかされ、それらの検出の難しさからすべてのパクツイを検出することの難しさに突き当り、開発を最小限にとどめ、もう一つのサービス、数学に特化した掲示板を同時並行で開発することとした。

 こちらのサービスについては、学生からの先生へのメールで数式を書くことの難しさを目の当たりにし、質問内容と回答内容を見えやすくするように、数式をTeXを使ってきれいに記述できる掲示板を構築している。

 メンバーは、過去に開発プロダクトが無い状態で企画コンペに応募して失敗したり、開発中のエラーで、意思に反して開発が続かないことが常態化したりと、それぞれ抱えていた悩みを本プロジェクトでは解消できそうな点でとても満足していると回答してくれた。

OSF 

 サービス内容:オンラインでの文化祭制作

 チーム代表は、五月祭も延期となり、自分も行く予定をしていたライブも中止や延期となる中で、創作を発表する場が無くなると考えた。オンラインでも、創ったものを発表できる場を、とサービス開発を始めた。

 高校や大学の文化祭のように、参加者皆が同じテーマに対して、音楽であれ、イラストであれ、制作したものを発表しあえる場にしたいということでチーム名もOnline School Festivalとなった。既にある創作の発表プラットフォームについてYoutubeだと動画、Pixivだとイラストのように限定されているところを、ジャンルの垣根を超えられたら面白いと考え、開発を進めてきた。

 サービス利用者に対して、「創りたい気持ちはだれにだってあるはず、気軽に投稿してみてほしい」とのこと。ユーザーを多く獲得できるようにCMも作成したが、10人単位でも使ってくれる人がいたら運用の継続を考えている。

日記共有レコメンド

 サービス内容:他人の日記から次の日での行動をリコメンド

 チーム代表はサービスに至ったきっかけが、友達と長時間のオンライン会話だと教えてくれた。話していて気づいたら一日が終わっており、その日したことを覚えてないことへの悔しさからサービスを思いついた。

 無駄に過ごすことがないように、自分の現実での行動に対するアドバイスをしてくれるサービス。アドバイスは他人の日記からしようというものがメインの機能だが、今は共有する時の匿名性を如何に高めるかに苦戦しているという。また、ユーザーの在り方として、一日の終わりに振り返った時に、例えば10分の筋トレと1時間のユーチューブをしたとすると、後者のユーチューブを書かないといった形で美化されやすい。そこをGITHUBのように随時プッシュする機能を作れないか、模索している。

 プロジェクトチームは高校時代からの友人で、チーム代表以外は他大。このプロジェクトを話すきっかけにして声をかけた。メンバーの多くが就活生ということもあり、互いに強制しあわずできることから開発を進めている。

Amithyst

サービス内容:賞賛することで増えるトークンを用いたクリエイターマーケット

 新型コロナ渦で交流がしづらくなった中で、Facebookグループで友達が自分が書いた絵や作った音楽などをシェアしており、思わぬ才能が近くにあることを知った。そのことをきっかけに作品を共有しあえるプラットフォームを考えるように。Facebookグループだとクローズドであり、タイムライン表示だと評価関係なく、古いものが下へ追いやられる。何より『Stay Home』で今は皆が無料で公開しているものも長期的に価値が評価される場を作れないかと考えた。

 行きついたサービスは金銭的価値に縛られず、またお金に人間関係の価値観が付加された、良心だけで回るギブアンドギブなクリエイターマーケット。金銭に縛られないことでどんな小さなことも“クリエイト”として評価されていく優しい世界。仕組としては価値を生み出したこと自体への評価として宙から湧いて出た+1が価値として加わること、つまり評価すればするほど互いに価値を生み合う1+1=3の世界の実現が肝となる。 

 技術的にはトークンの設定が重要になるが、とても難しい挑戦であり現実的に6週間での開発は難しいため、プロジェクト終了後のローンチに向けて開発を進めている。将来的にはアートに留まらず、例えばアカデミックの価値も正しく評価される世界の実現に貢献できればと考えている。

サイトはこちらより

コロトモ

 サービス内容:新型コロナ渦で新しく出てきたサービスの一覧化

 このプロジェクトが始まった時に、プロジェクトを通じて出てくるサービスを紹介したい、とこのサービスが浮かんできた。また、社会情勢が変わる中で様々なサービスがでて来ているはずだが、それらの検索は難しく、サービスを提供する側も小規模だと発信しづらい現状に対して貢献する狙いがある。

 サービスは基本的にユーザーが投稿できるものにして、開発するメンバーが知らないものもサイトに一覧化される様に考えている。投稿が増えていく中で分類化を進めていく。また投稿後、その内容をTwitterなどでシェアできる機能をつけることで、それらを見た人もユーザーになり、利用者の輪も広がる様に設計している。

 チームメンバーのうち二人は初心者で、チーム代表も授業でRailsを触った時に躓いてしまったため、今回は良いリベンジになっているという。最後に、このサービスがリリースされたときに、まずUTokyo Project Sprintで誕生した良いサービスが掲載予定なので、是非見てほしいとのことだった。

サイトはこちらより

オンラインババ抜き

 サービス内容:オンラインでも駆け引きを楽しめるババ抜き

 ババ抜きと言えば、簡単なようで表情や仕草から互いに読みが生まれる高度なゲーム。現状、オンラインでババ抜きをやろうとすると、これらの要素が殆ど除外され、確率のゲームになってしまっている。この現状を変えるべく、サービス開発を進める。

 本プロジェクト期間では、最後の二枚からどのように選ぶかという局面の再現できるように、例えば表情の変化などを表示できるUIなどを開発し、プロジェクト期間後はゲームとして成り立つように改善していく。カメラ越しで行うため、コンピューターによる表情の解析が可能であり、行く行くはコンピューターと人間の騙し合いも出てくるのではないかという話はとても興味深い。

 メンバーはTodai To Texasにも参加し、ソフトウェアは初めてだったが、ハードウェアの開発には慣れていたため、調べ方についてはあまり苦労していないという。テックガレージと異なり、他のチームでの開発状況があまり見えないため、それによる競争意識なく開発を進められるのは良い点として挙げた。

サイトはこちらより

食べリュー

 サービス内容:資本力で劣る美味しい飲食店が評価されるサービス

 チーム代表が住む地域の近くで個人経営する美味しい中華屋が困窮している現状を変えるべく起ちあがったという。資本力にものを言わせる大衆料理店にも負けないないように、美味しい個人経営の店を支援できるサービスを目指している。

 今回取材したチームの中で最もウェブサービスでないところに注力しているチーム。というのも現状は、個人経営の飲食店が最も困っている課題を探しつつ、また飲食店向けの補助金申請を手伝うなど既に彼らが抱える課題開発にも貢献しつつ、ととても忙しい。ウェブサービスの開発は殆どWordPressで済んでしまいそうなものに留める点は本プロジェクトの意図からは少し離れている。ただ、補助金の申請締め切りが夏までであり、課題開発を考えるとウェブ開発能力よりも実際に困っている人を助けるために補助金申請を手伝うことを優先しており、その姿勢は注目に値する。

 今後は補助金申請で飲食店との信頼関係を築きつつ、ユーザーインタビューなどを通じて、より多くの消費者に個人経営の飲食店の美味しさを届けられるようなサービスの具体的なイメージを探っていく。

Seacletter

 サービス内容:オンライン飲み会用のランダム投稿型Webサービス

 最初は、30-50代向けにオンライン飲み会の話題の種をつくることと、困っている飲食店向けの利用者を増やすことを両立するサービスを考えていたが、配送の問題に行き当たりピボット。現在は、学生も含めてオンライン飲み会中が盛り上げるウェブアプリケーションを考えている。

 メインの機能としては、事前に互いの秘密を投稿したものがボタン操作によりランダムに匿名で表示され、その秘密が誰のものなのかあてつつ、それを話題の種にできる、というものだ。オンラインでの飲み会は思ったよりも楽しいが、ラグなどがあり、直接会える場ほど盛り上がらない現実に対して、オンラインだからこそ楽しめるものを作りたくなったという。

  機能については開発を進める中でアイデアが多く出てきたので、サービスを形にすることを意識して、メインの機能に的を絞っている。プロジェクト終了後も機能を拡張するか、あるいはシンプルなもののとして維持するか少し悩んでいるとのこと。コロナが収束し後も、使用されるサービスにすることを意識しており、今後もオンライン飲み会はさほど無くならないだろうと睨んでいる。

オンラインTRPG

 サービス内容:気軽にオンラインでもできるTRPG

 TRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)とは、卓を囲んだプレイヤーがルールブックと自分たちの会話でストーリーを創り上げ、さいころや鉛筆を用いてゲーム進行をきめるゲームのこと。ゲームとして多くのコミュニケーションを必要とすることから、コミュニケーション不足の現状でも気軽にできる娯楽としてチームは注目した。

 元々アナログなものをデジタルに持ち込むことの挑戦があるものの、リアルの場合と比べ、進行に関するデータ参照もしやすく、またプレイヤー同士のコミュニケーションを隠せるようになったお陰でリアルの場にない深みを創り上げることができそうな点にも面白みを見出している。既にユーザーが急増している競合がいるため、彼らにない特徴を実装することを最初の目標にしている。

 TRPGとしてはクトゥルフ神話をモチーフにしたものを開発中で、イラストについても友人に依頼してキャラデザインなどは既に出来上がっているとのこと。

Fukyo

 サービス内容:オンラインで自分の熱狂を語れるプラットフォーム

 偶然の出会いがこの状況下で減っている中で、コミュニケーションを活性化できないかと本サービスの開発を進めている。イメージは学科の控室のように、自分と異なる専門性について話が盛り上がっているところに飛び込んだときに自分の地平を広げられるような体験を目指している。元々、研究者のように何かに熱中している人を応援したいというメンバーの思いがあり、熱狂している人の後押しとなるサービスを今回は考えた。

 サービスとしては、語りたい人がたてたルームを、話を聴きたいユーザーが自分が選んだタブ内に整理されたルーム一覧から選べて、入室すると、語りたい人が限られた時間内で話をするというもの。制限時間後、話者に対して聴衆が評価できレート表示をつけることも検討中。ユーザーインタビューの中で、時間を5分ほどの短いものにするか、和気あいあいと雑談できるものにするか方向性を決める予定。

⑤今後のプログラムスケジュール

 Acquire User (2週間):実際にサービスを他者が利用する期間。ユーザーのフィードバックを受けながら、サービスを改良する。(5月4週目、6月初週)

 オンライン発表会は6月13日(土)に決まっており、東大企業・投資家を集めて発表会を行う予定だが、詳細は未定。ピッチ動画での選考を勝ち抜いた8チームほどがライブでピッチする形式でコンテストになる。またこの発表会とは別で選ばれたチームはテックガレージのSFPに選考免除という形で推薦されることとなり、自主的に起ちあがった本企画が東大の公式プログラムと連続性が生まれたことは注目に値する。